陸上競技のスポーツ障害 vol4
脛骨疲労骨折 



疲労骨折は、金属疲労から由来したもので、骨に微小な力が繰り返し加わることにより、微小な骨折を生じ、最後には完全骨折に至るものであります。
脛骨疲労骨折には長距離走選手で多い疾走型と、ハードル、跳躍選手にみられる跳躍型、そしてすべての競技でみられる後内側型の3つのタイプがあります。









疾走型ではランニング中や接地や蹴り出しに際して、下腿内側後面の重い鈍痛で発症する事が多いようです。まれにレース中や高強度のランニング中に急な激痛で発症する事もあります。
跳躍型はスプリントや跳躍の助走時の強い着地衝撃に際して、下腿全面の比較的局在した疼痛として発症する事が多く、初期には高強度のトレーニング時しか疼痛を自覚しないため発見が遅れ慢性化する例が多くなります。










〈発症メカニズム〉

脛骨はわずかに前湾があるため、前方骨皮質に伸張負荷、後方骨皮質には圧縮負荷が加わります。これらの反復の結果、骨組織に破断が生じたのが疲労骨折であります。










〈好発年齢・レベル〉

疾走型、後内側型は10代から30代までのすべての年代でみられますが、高校1年生での発生、女性に多い印象がありますが、同一競技レベルでの比較ではさほどの男女差はなく、トップレベルまでのあらゆるレベルで発症します。
跳躍型は10代と20代の選手がほとんどであり、特に年齢的特徴や性差は見られません。
 
圧通の局在部位の確認により大部分は臨床診断されますが、ほとんどの場合脛骨側方向X戦像により確定診断されます。
疾走型では脛骨後方骨皮質に表面を覆うような仮骨がみられる事が重要な所見でありますが、同側に既往がある選手では今回の受傷がどの位置であるかを皮膚上とX線像上で照会する必要があります。

跳躍型では初期には前方骨皮質に局所的肥厚と骨折線を認め、長期化すると骨硬化し嘴状に突出した偽関節像を呈するようになります。
治療過程もX線像の推移を観察する事で追跡され、疾走型では化骨の硬化・成熟を跳躍型では骨折線の消失、均一化を治癒像として判断します。 









〈治療・リハビリテーション〉

疲労骨折は一般に局所への力学的な負担を軽減する事で治癒します。したがって、疾走型では保存療法で治癒します。
跳躍型では、偽関節になっていない場合には保存療法で治癒する可能性があり、物理療法が試みられます。偽関節を呈する場合でも保存療法が試みられますが、改善がみられなければ手術の適応となります。手術療法としては、偽関節部の切除、骨移植、髄内釘による内固定行われます。
 
疾走型、後内側型では完全なトレーニング休止ではなく、固定式自転車や水中運動、疼痛の発生しない強度のランニングであれば許可します。また、着地衝撃を緩和する目的で足底板やインソールを装着し、受傷の要因になりうる筋タイトネスや関節可動制限がある場合には、ストレッチングや関節モビライゼーションを行います。さらに、衝撃緩和に必要な下肢筋力の強化も指示する事により、受傷後1〜2ヵ月ほぼ100%競技に復帰する事ができます。

跳躍型ではスプリントやジャンプのトレーニングを休止させ、固定式自転車や水中運動行います。筋力トレーニングにおいても、脛骨の骨折部より遠位に抵抗が加わる運動は禁止し、骨折線の縮小に合わせて少しずつランニングを許可していく事になります。保存療法により骨折線の消失まで通常3〜6ヵ月を要し、手術例でも骨癒合には術後3〜6ヵ月を要するといわれます。

治療が長期化する場合では元のレベルまでの復帰が難しい場合があり、復帰率は80%程度といわれております。 







    
 
カテゴリ:スポーツ障害 | 01:42 |
陸上競技のスポーツ障害 vol3
足底筋膜炎
 


着地時の踵部足底内側部の疼痛が特徴です。特に起床時の歩き始めや、走り始めの時間帯に疼痛が強く、疼痛部に一致した腱膜の腫脹がみられます。
多くは足底腱膜の踵骨内側隆起起始部より数cmの部位に発生します。まれに足底中央部に発生する遠位型もみられます。






 





〈発症メカニズム〉

着地後の立脚中期に足部が回内し、母趾球に移動した荷重を足趾背屈位で蹴り出す間の足底腱膜への強い伸長負荷が原因となります。

長期経過例では疼痛をかばって着地パターンが変化している場合があり、足関節背屈可動域の不足や足部の硬い凹足に多い傾向がありますが、反対に偏平足荷重により容易に縦アーチが低下するため、腱膜が直接過重負荷を受けて発症したと思われる例もあります。






 







〈好発年齢・レベル〉

長距離走選手に多いようですが、短距離走や跳躍の選手でも発生がみられます。
年齢的には大学生から社会人選手での発生が多いほか、30〜40代以降の市民ランナーにも多いようです。
若年の競技選手では性差はあまりみられませんが、市民ランナーでは男性に多い傾向があります。

 
疼痛や圧通部位の確認でほとんど診断可能でありますが、確定診断に超音波検査が用いられる事が多いようです。
足底線維腫では比較的境界明瞭な弾性のある腫瘤を触れます。踵のしびれが著しい場合には内側足底神経や踵骨枝の神経絞扼が疑われ、腱膜の腫脹と合併することもあるため注意が必要です。






 





〈治療・リハビリテーション〉

初期には腱膜の安静の目的でトレーニングの休止、軽い固定を施し、物理療法などの保存療法を行います。
慢性期で腱膜の腫脹が明らかで、保存療法で効果がみられない場合には手術療法の適用になります。手術では足底筋膜の起始部での切離が行われます。

 
着地時の疼痛が明らかな間は、足底板やインソール、テーピングなどで負荷の軽減を図り、固定自転車や水中運動などで有酸素運動を行います。
保存療法においては、下腿後面や足底の筋の柔軟性の向上が重要であり、これらの部位のストレッチングも重要になります。







 
カテゴリ:スポーツ障害 | 07:33 |
陸上競技のスポーツ障害 vol2

アキレス腱障害(腱炎、腱周囲炎、腱付着部炎)



陸上競技の選手はもちろんですが、最近の健康ブームを反映してか中年以降のジョギングやウォーキングを習慣にしている人にもよくみられるようになりました。
ランニングや跳躍動作による下腿三頭筋への負荷の増大、腱の変性(加齢変化)、筋力や柔軟性の低下、回内足や偏平足なども発症要因となります。


〈症状〉
ランニングや跳躍時の疼痛が主症状であり、損傷部の腫脹がみられる事が少なくなく、腱症や腱周囲炎は踵骨付着部より3〜5cm付近に発生しやすいようです。

 


     
 

〈発症メカニズム〉

腱症は腱に加わる張力により腱繊維に微細損傷が生じたものであり、腱周囲炎は足関節底背屈の反応により炎症を生じたものであります。付着部炎は踵骨後方隆起とアキレス腱との摩擦や衝突により間に介在する滑液包炎が起こり、進行すると腱にも損傷が生じるのであります。

ストレスの反復によってアキレス腱に小さな断裂や瘢痕が生じて変性し、アキレス腱の炎症が周囲のパラテノンに及んで慢性的な炎症・肥厚をきたして腱と癒着する場合もあります。




           



 
〈好発年齢・レベル・診断〉

いずれも幅広い年齢、レベルの選手に発生しており、短距離から長距離まで様々な種目で発生がみられます。
腱実質に腫脹や硬結が存在すれば腱症であり、腱周囲炎はパラテノンの腫脹が足関節の底背屈により移動させられます。

アキレス腱部の腫脹、疼痛、圧痛、熱感などを感じ、進行すると足関節の運動障害(背屈障害)や歩行障害を起こします。足関節を動かした時、アキレス腱が軋むような摩擦音を生じる場合もあります。





 


〈治療・リハビリテーション〉

腱周囲炎では急性の時期にはアイシングや患部の安静により慢性化させない事が一番重要であります。パラテノンの腫脹・肥厚から腱との癒着が起こると難治性になり腱症を併発することもあります。
腱症では腱繊維の微細断裂の修復を待ちますが、硬結の切除や部分断裂を形成する事があり、広範囲の縦断裂がみられると修復されにくくなります。

  
腱周囲炎・腱症では下腿三頭筋のストレッチを十分に行います。腱症では急性期を過ぎて疼痛が軽減した頃より伸長性訓練が推奨されます。これは階段のような段を用いてつま先荷重し足関節中間位から徐々に背屈位まで踵を下ろしていくものです。これにより下腿三頭筋の筋修復合体に対する伸長性負荷が加えられます。

腱付着部炎ではシューズやスパイクの踵部を持ち上げ、腱と骨との衝突を緩和させます。下腿三頭筋のストレッチングは患部の腫脹が強い時には無理に行わせないようにします。腱周囲炎の急性期の復帰率は100%であり、軽傷例は1週間で、通常2〜3週間で復帰できますが、腱炎の軽傷例は1〜2ヵ月、重症例は3〜6ヵ月復帰に要する場合があります。






カテゴリ:スポーツ障害 | 01:20 |
陸上競技のスポーツ障害 vol 1
陸上競技に於けるスポーツ障害




陸上競技は、陸上で行われるすべての競技の、基本動作を競う競技である。と考える事ができます。走るあるいは歩く速さ、跳ぶ距離と高さ、投げる距離を競い数値化される競技であります。

スポーツのトレーニングの基本的な動作を反復練習するのが常であり、なかでも、その単独要素を専門的に行う陸上競技では、同一動作の反復が他の競技に比べて著しいと言えます。
ランニングを原因とする損傷は多数の競技で発生しますが、その頻度も種類も陸上競技に勝ることはないと考えます。









|撒離・跳躍

短距離・跳躍(ハードルを含む)は瞬発的な身体移動を行う種目であります。出来る限り速いピッチと大きなスライドが求められたり(短距離)、より大きい蹴りだしの力で大きく重心移動させたり(走り幅跳び、三段跳び、走り高跳び、棒高跳び)、走りに障害を越える事が加わる(ハードル)という各種目の特徴があります。

これらの種目では大きな推進力を生むために下肢の筋活動が要求され、下肢の大きな筋である大腿四頭筋、ハムストリング、腓腹筋などの急性の筋損傷(肉ばなれ)やこれらに連続する腱(膝蓋腱、アキレス腱、足底腱膜など)高い衝撃が反復して加わる骨(脛骨の跳躍型疲労骨折、船状骨、中足骨など)の慢性損傷が発生しやすいのであります。









         
長距離

 一方、長距離や競歩では、長時間(50匐ナ發任4時間近く)のランニングあるいは歩行動作の連続が要求され、高い有酸素能力と筋持久力が求められます。

したがって、その間の着地と蹴りだしの動作の回数はおびただしいものとなります。そのため大部分の損傷は慢性経過で発生します。
着地時の衝撃が伝わる骨(脛骨、中足骨など)では疲労骨折が、着地や蹴り出しの際に弾性エネルギーを蓄積・放出する腱(アキレス腱・膝蓋腱など)では腱症、腱周囲炎などが、また筋自体にも多量の細胞損傷やそれに伴う浮腫による内圧上昇(コンパートメント症候群)を生じるのであります。

長距離系の種目では体重や体脂肪が少ない方が競技上有利と考え、体重や体脂肪を低く抑えようとする選手や指導者が多いのも事実であり、そのため、骨密度が低くなり、女子選手では無月経などを呈する者も多く、疲労骨折など慢性損傷の危険を高める事にもなっています。






  


     

 
E蠅討種目

投てき種目は選手の体型も前2種目とは異なり、大きなパワーを発揮できる筋量が多く体重が重い選手が多いようです。

また、走りという重心移動とは全く異なり、砲丸、円盤、槍、ハンマーを投げるという上肢を使った動作であり、より遠く投げるために下肢、体幹の筋力を用いることになります。
そのため他の種目ではほとんど発生のない肩や肘など上肢の慢性損傷が多く、体幹や下肢の急性の筋損傷も比較的多いのも事実であります。









 
カテゴリ:スポーツ障害 | 19:30 |
野球のスポーツ障害 (肩の障害編 vol5)

リトルリーグショルダー
 

リトルリーグショルダーとは、野球のスポーツ障害であり、端的にいえば野球肩ということになります。
野球肩の中でも小学生など成長期の子供がかかる野球肩であり、子供が所属してプレーする硬式野球の組織をリトルリーグと呼ぶため、このような名前が付いています。

障害が発生する場所や、その症状などは通常の大人の野球肩と同じであると考えられていますが、その発症の原因や状態は大きな違いがみられます。







リトルリーグショルダーとは、成長期の野球選手、特に投手に起こりがちな肩にみられる障害の総称であります。

成長期の野球選手の投球動作の特徴として、
  • 肩外転角度が小さい(肘下がり)。
  • 投球方向への体幹の回旋が少ない。
  • 体幹の非投球側への側屈が大きい。
があげられます。

実際、投球動作の指導では「体の開き」に着目することが少なく、その要因として体幹の回旋不足、側屈の増加、振り出し脚股関節の可動性、骨盤の回旋運動などが指摘されております。

症状としては肩が痛む。または関節の動きに違和感が出できますが、代表的なものとして「上腕骨近位骨端線離開」があります。

これは成長に伴っての伸び代となる骨端核がずれたり離れたりしてしまいます。成長とともに、腕が短くなる、肩の動きが悪くなる、といった状況を引き起こす可能性があり注意が必要なのであります。







原因として、骨格が出来上がっていない成長期の野球選手が不自然な投球フォームで投球をしたり、過度な投球練習をしたり、試合で過度な投球をする。などで発症する場合を多く認めます。

骨格を形成する中で、骨格として発達する骨端核が、過度な運動により離開したり、軟骨組織が削れ、破壊されたり骨格異常に発展する場合が多いのであります。
 

リトルリーグショルダーというという名前ですが、近年、投球フォームをチェックして、投球数を厳しく規定している硬式野球の選手よりも、投球数に制限を持たない、父兄コーチの多い軟式野球の選手に、多く発症する事例を認めるのであります。
少年野球の発展のためにも、年齢による投球数制限は必要であると痛感しております。








検査方法としては、主にレントゲン検査が挙げられます。
レントゲンの撮影結果によって症状が認められる場合が多く、その検査で判断が難しい場合はMRIやCT検査、エコー検査などを行い症状の有無を判断します。

多くの場合はレントゲン検査のみで所見が判明し、症状が見受けられるかどうかが判断できます。


リトルリーグショルダーは骨端線の部分の広がり度合いによって、3つに分類されます。
病名として「骨端線離開」といい、骨端核が骨端線から離れていくからであり、主に儀燭鉢況燭ほとんどであります。
肩に痛みを感じた時点でレントゲン撮影を行い、状態がどの段階にあるのか確認するのは重要であると思います。







治療法としては、まず投球動作を中止することです。

特徴として、「肩が痛いから練習を休む。」しばらく練習を休むと、「投球しても痛みがなくなったから。」と練習を再開するとまた痛みを覚える。
これを繰り返して症状を悪化させている状況に数多く遭遇しております。

投球を中止している間に圧痛や運動痛などが減少してきた時点で、肩周辺、体幹、股関節のストレッチングなどをおこない関節の可動域を広げるようにします。







そして、投球フォームにも問題がある場合が多いため、必ずフォームのチェックが必要になります。トップの画像のようなフォームはもちろん、過角形成も問題であります。これを怠ると再開した時にまた再発することになるのであり、無理のない投球フォームの習得が絶対に必要です。
 
筋肉の委縮を認める場合もあるため筋力をつけながら、シャドウピッチングを行い、徐々にボールをつかった練習などに移行していくことが重要です。

概ね、練習を中止してやることで良好な経過をたどるのが多いのですが、骨端核が骨端線から離れた度合いにより、その復帰時期に差がでてくるのも事実であります。

また、投球フォームの問題だけでない、過度の練習内容による場合も見受けられるため、そのあたりの助言も必要になってきます。








 
カテゴリ:スポーツ障害 | 07:28 |
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