陸上競技のスポーツ障害 vol4
脛骨疲労骨折 



疲労骨折は、金属疲労から由来したもので、骨に微小な力が繰り返し加わることにより、微小な骨折を生じ、最後には完全骨折に至るものであります。
脛骨疲労骨折には長距離走選手で多い疾走型と、ハードル、跳躍選手にみられる跳躍型、そしてすべての競技でみられる後内側型の3つのタイプがあります。









疾走型ではランニング中や接地や蹴り出しに際して、下腿内側後面の重い鈍痛で発症する事が多いようです。まれにレース中や高強度のランニング中に急な激痛で発症する事もあります。
跳躍型はスプリントや跳躍の助走時の強い着地衝撃に際して、下腿全面の比較的局在した疼痛として発症する事が多く、初期には高強度のトレーニング時しか疼痛を自覚しないため発見が遅れ慢性化する例が多くなります。










〈発症メカニズム〉

脛骨はわずかに前湾があるため、前方骨皮質に伸張負荷、後方骨皮質には圧縮負荷が加わります。これらの反復の結果、骨組織に破断が生じたのが疲労骨折であります。










〈好発年齢・レベル〉

疾走型、後内側型は10代から30代までのすべての年代でみられますが、高校1年生での発生、女性に多い印象がありますが、同一競技レベルでの比較ではさほどの男女差はなく、トップレベルまでのあらゆるレベルで発症します。
跳躍型は10代と20代の選手がほとんどであり、特に年齢的特徴や性差は見られません。
 
圧通の局在部位の確認により大部分は臨床診断されますが、ほとんどの場合脛骨側方向X戦像により確定診断されます。
疾走型では脛骨後方骨皮質に表面を覆うような仮骨がみられる事が重要な所見でありますが、同側に既往がある選手では今回の受傷がどの位置であるかを皮膚上とX線像上で照会する必要があります。

跳躍型では初期には前方骨皮質に局所的肥厚と骨折線を認め、長期化すると骨硬化し嘴状に突出した偽関節像を呈するようになります。
治療過程もX線像の推移を観察する事で追跡され、疾走型では化骨の硬化・成熟を跳躍型では骨折線の消失、均一化を治癒像として判断します。 









〈治療・リハビリテーション〉

疲労骨折は一般に局所への力学的な負担を軽減する事で治癒します。したがって、疾走型では保存療法で治癒します。
跳躍型では、偽関節になっていない場合には保存療法で治癒する可能性があり、物理療法が試みられます。偽関節を呈する場合でも保存療法が試みられますが、改善がみられなければ手術の適応となります。手術療法としては、偽関節部の切除、骨移植、髄内釘による内固定行われます。
 
疾走型、後内側型では完全なトレーニング休止ではなく、固定式自転車や水中運動、疼痛の発生しない強度のランニングであれば許可します。また、着地衝撃を緩和する目的で足底板やインソールを装着し、受傷の要因になりうる筋タイトネスや関節可動制限がある場合には、ストレッチングや関節モビライゼーションを行います。さらに、衝撃緩和に必要な下肢筋力の強化も指示する事により、受傷後1〜2ヵ月ほぼ100%競技に復帰する事ができます。

跳躍型ではスプリントやジャンプのトレーニングを休止させ、固定式自転車や水中運動行います。筋力トレーニングにおいても、脛骨の骨折部より遠位に抵抗が加わる運動は禁止し、骨折線の縮小に合わせて少しずつランニングを許可していく事になります。保存療法により骨折線の消失まで通常3〜6ヵ月を要し、手術例でも骨癒合には術後3〜6ヵ月を要するといわれます。

治療が長期化する場合では元のレベルまでの復帰が難しい場合があり、復帰率は80%程度といわれております。 







    
 
カテゴリ:スポーツ障害 | 01:42 |
陸上競技のスポーツ障害 vol3
足底筋膜炎
 


着地時の踵部足底内側部の疼痛が特徴です。特に起床時の歩き始めや、走り始めの時間帯に疼痛が強く、疼痛部に一致した腱膜の腫脹がみられます。
多くは足底腱膜の踵骨内側隆起起始部より数cmの部位に発生します。まれに足底中央部に発生する遠位型もみられます。






 





〈発症メカニズム〉

着地後の立脚中期に足部が回内し、母趾球に移動した荷重を足趾背屈位で蹴り出す間の足底腱膜への強い伸長負荷が原因となります。

長期経過例では疼痛をかばって着地パターンが変化している場合があり、足関節背屈可動域の不足や足部の硬い凹足に多い傾向がありますが、反対に偏平足荷重により容易に縦アーチが低下するため、腱膜が直接過重負荷を受けて発症したと思われる例もあります。






 







〈好発年齢・レベル〉

長距離走選手に多いようですが、短距離走や跳躍の選手でも発生がみられます。
年齢的には大学生から社会人選手での発生が多いほか、30〜40代以降の市民ランナーにも多いようです。
若年の競技選手では性差はあまりみられませんが、市民ランナーでは男性に多い傾向があります。

 
疼痛や圧通部位の確認でほとんど診断可能でありますが、確定診断に超音波検査が用いられる事が多いようです。
足底線維腫では比較的境界明瞭な弾性のある腫瘤を触れます。踵のしびれが著しい場合には内側足底神経や踵骨枝の神経絞扼が疑われ、腱膜の腫脹と合併することもあるため注意が必要です。






 





〈治療・リハビリテーション〉

初期には腱膜の安静の目的でトレーニングの休止、軽い固定を施し、物理療法などの保存療法を行います。
慢性期で腱膜の腫脹が明らかで、保存療法で効果がみられない場合には手術療法の適用になります。手術では足底筋膜の起始部での切離が行われます。

 
着地時の疼痛が明らかな間は、足底板やインソール、テーピングなどで負荷の軽減を図り、固定自転車や水中運動などで有酸素運動を行います。
保存療法においては、下腿後面や足底の筋の柔軟性の向上が重要であり、これらの部位のストレッチングも重要になります。







 
カテゴリ:スポーツ障害 | 07:33 |
陸上競技のスポーツ障害 vol2

アキレス腱障害(腱炎、腱周囲炎、腱付着部炎)



陸上競技の選手はもちろんですが、最近の健康ブームを反映してか中年以降のジョギングやウォーキングを習慣にしている人にもよくみられるようになりました。
ランニングや跳躍動作による下腿三頭筋への負荷の増大、腱の変性(加齢変化)、筋力や柔軟性の低下、回内足や偏平足なども発症要因となります。


〈症状〉
ランニングや跳躍時の疼痛が主症状であり、損傷部の腫脹がみられる事が少なくなく、腱症や腱周囲炎は踵骨付着部より3〜5cm付近に発生しやすいようです。

 


     
 

〈発症メカニズム〉

腱症は腱に加わる張力により腱繊維に微細損傷が生じたものであり、腱周囲炎は足関節底背屈の反応により炎症を生じたものであります。付着部炎は踵骨後方隆起とアキレス腱との摩擦や衝突により間に介在する滑液包炎が起こり、進行すると腱にも損傷が生じるのであります。

ストレスの反復によってアキレス腱に小さな断裂や瘢痕が生じて変性し、アキレス腱の炎症が周囲のパラテノンに及んで慢性的な炎症・肥厚をきたして腱と癒着する場合もあります。




           



 
〈好発年齢・レベル・診断〉

いずれも幅広い年齢、レベルの選手に発生しており、短距離から長距離まで様々な種目で発生がみられます。
腱実質に腫脹や硬結が存在すれば腱症であり、腱周囲炎はパラテノンの腫脹が足関節の底背屈により移動させられます。

アキレス腱部の腫脹、疼痛、圧痛、熱感などを感じ、進行すると足関節の運動障害(背屈障害)や歩行障害を起こします。足関節を動かした時、アキレス腱が軋むような摩擦音を生じる場合もあります。





 


〈治療・リハビリテーション〉

腱周囲炎では急性の時期にはアイシングや患部の安静により慢性化させない事が一番重要であります。パラテノンの腫脹・肥厚から腱との癒着が起こると難治性になり腱症を併発することもあります。
腱症では腱繊維の微細断裂の修復を待ちますが、硬結の切除や部分断裂を形成する事があり、広範囲の縦断裂がみられると修復されにくくなります。

  
腱周囲炎・腱症では下腿三頭筋のストレッチを十分に行います。腱症では急性期を過ぎて疼痛が軽減した頃より伸長性訓練が推奨されます。これは階段のような段を用いてつま先荷重し足関節中間位から徐々に背屈位まで踵を下ろしていくものです。これにより下腿三頭筋の筋修復合体に対する伸長性負荷が加えられます。

腱付着部炎ではシューズやスパイクの踵部を持ち上げ、腱と骨との衝突を緩和させます。下腿三頭筋のストレッチングは患部の腫脹が強い時には無理に行わせないようにします。腱周囲炎の急性期の復帰率は100%であり、軽傷例は1週間で、通常2〜3週間で復帰できますが、腱炎の軽傷例は1〜2ヵ月、重症例は3〜6ヵ月復帰に要する場合があります。






カテゴリ:スポーツ障害 | 01:20 |
陸上競技のスポーツ障害 vol 1
陸上競技に於けるスポーツ障害




陸上競技は、陸上で行われるすべての競技の、基本動作を競う競技である。と考える事ができます。走るあるいは歩く速さ、跳ぶ距離と高さ、投げる距離を競い数値化される競技であります。

スポーツのトレーニングの基本的な動作を反復練習するのが常であり、なかでも、その単独要素を専門的に行う陸上競技では、同一動作の反復が他の競技に比べて著しいと言えます。
ランニングを原因とする損傷は多数の競技で発生しますが、その頻度も種類も陸上競技に勝ることはないと考えます。









|撒離・跳躍

短距離・跳躍(ハードルを含む)は瞬発的な身体移動を行う種目であります。出来る限り速いピッチと大きなスライドが求められたり(短距離)、より大きい蹴りだしの力で大きく重心移動させたり(走り幅跳び、三段跳び、走り高跳び、棒高跳び)、走りに障害を越える事が加わる(ハードル)という各種目の特徴があります。

これらの種目では大きな推進力を生むために下肢の筋活動が要求され、下肢の大きな筋である大腿四頭筋、ハムストリング、腓腹筋などの急性の筋損傷(肉ばなれ)やこれらに連続する腱(膝蓋腱、アキレス腱、足底腱膜など)高い衝撃が反復して加わる骨(脛骨の跳躍型疲労骨折、船状骨、中足骨など)の慢性損傷が発生しやすいのであります。









         
長距離

 一方、長距離や競歩では、長時間(50匐ナ發任4時間近く)のランニングあるいは歩行動作の連続が要求され、高い有酸素能力と筋持久力が求められます。

したがって、その間の着地と蹴りだしの動作の回数はおびただしいものとなります。そのため大部分の損傷は慢性経過で発生します。
着地時の衝撃が伝わる骨(脛骨、中足骨など)では疲労骨折が、着地や蹴り出しの際に弾性エネルギーを蓄積・放出する腱(アキレス腱・膝蓋腱など)では腱症、腱周囲炎などが、また筋自体にも多量の細胞損傷やそれに伴う浮腫による内圧上昇(コンパートメント症候群)を生じるのであります。

長距離系の種目では体重や体脂肪が少ない方が競技上有利と考え、体重や体脂肪を低く抑えようとする選手や指導者が多いのも事実であり、そのため、骨密度が低くなり、女子選手では無月経などを呈する者も多く、疲労骨折など慢性損傷の危険を高める事にもなっています。






  


     

 
E蠅討種目

投てき種目は選手の体型も前2種目とは異なり、大きなパワーを発揮できる筋量が多く体重が重い選手が多いようです。

また、走りという重心移動とは全く異なり、砲丸、円盤、槍、ハンマーを投げるという上肢を使った動作であり、より遠く投げるために下肢、体幹の筋力を用いることになります。
そのため他の種目ではほとんど発生のない肩や肘など上肢の慢性損傷が多く、体幹や下肢の急性の筋損傷も比較的多いのも事実であります。









 
カテゴリ:スポーツ障害 | 19:30 |
野球のスポーツ障害 (肩の障害編 vol5)

リトルリーグショルダー
 

リトルリーグショルダーとは、野球のスポーツ障害であり、端的にいえば野球肩ということになります。
野球肩の中でも小学生など成長期の子供がかかる野球肩であり、子供が所属してプレーする硬式野球の組織をリトルリーグと呼ぶため、このような名前が付いています。

障害が発生する場所や、その症状などは通常の大人の野球肩と同じであると考えられていますが、その発症の原因や状態は大きな違いがみられます。







リトルリーグショルダーとは、成長期の野球選手、特に投手に起こりがちな肩にみられる障害の総称であります。

成長期の野球選手の投球動作の特徴として、
  • 肩外転角度が小さい(肘下がり)。
  • 投球方向への体幹の回旋が少ない。
  • 体幹の非投球側への側屈が大きい。
があげられます。

実際、投球動作の指導では「体の開き」に着目することが少なく、その要因として体幹の回旋不足、側屈の増加、振り出し脚股関節の可動性、骨盤の回旋運動などが指摘されております。

症状としては肩が痛む。または関節の動きに違和感が出できますが、代表的なものとして「上腕骨近位骨端線離開」があります。

これは成長に伴っての伸び代となる骨端核がずれたり離れたりしてしまいます。成長とともに、腕が短くなる、肩の動きが悪くなる、といった状況を引き起こす可能性があり注意が必要なのであります。







原因として、骨格が出来上がっていない成長期の野球選手が不自然な投球フォームで投球をしたり、過度な投球練習をしたり、試合で過度な投球をする。などで発症する場合を多く認めます。

骨格を形成する中で、骨格として発達する骨端核が、過度な運動により離開したり、軟骨組織が削れ、破壊されたり骨格異常に発展する場合が多いのであります。
 

リトルリーグショルダーというという名前ですが、近年、投球フォームをチェックして、投球数を厳しく規定している硬式野球の選手よりも、投球数に制限を持たない、父兄コーチの多い軟式野球の選手に、多く発症する事例を認めるのであります。
少年野球の発展のためにも、年齢による投球数制限は必要であると痛感しております。








検査方法としては、主にレントゲン検査が挙げられます。
レントゲンの撮影結果によって症状が認められる場合が多く、その検査で判断が難しい場合はMRIやCT検査、エコー検査などを行い症状の有無を判断します。

多くの場合はレントゲン検査のみで所見が判明し、症状が見受けられるかどうかが判断できます。


リトルリーグショルダーは骨端線の部分の広がり度合いによって、3つに分類されます。
病名として「骨端線離開」といい、骨端核が骨端線から離れていくからであり、主に儀燭鉢況燭ほとんどであります。
肩に痛みを感じた時点でレントゲン撮影を行い、状態がどの段階にあるのか確認するのは重要であると思います。







治療法としては、まず投球動作を中止することです。

特徴として、「肩が痛いから練習を休む。」しばらく練習を休むと、「投球しても痛みがなくなったから。」と練習を再開するとまた痛みを覚える。
これを繰り返して症状を悪化させている状況に数多く遭遇しております。

投球を中止している間に圧痛や運動痛などが減少してきた時点で、肩周辺、体幹、股関節のストレッチングなどをおこない関節の可動域を広げるようにします。







そして、投球フォームにも問題がある場合が多いため、必ずフォームのチェックが必要になります。トップの画像のようなフォームはもちろん、過角形成も問題であります。これを怠ると再開した時にまた再発することになるのであり、無理のない投球フォームの習得が絶対に必要です。
 
筋肉の委縮を認める場合もあるため筋力をつけながら、シャドウピッチングを行い、徐々にボールをつかった練習などに移行していくことが重要です。

概ね、練習を中止してやることで良好な経過をたどるのが多いのですが、骨端核が骨端線から離れた度合いにより、その復帰時期に差がでてくるのも事実であります。

また、投球フォームの問題だけでない、過度の練習内容による場合も見受けられるため、そのあたりの助言も必要になってきます。








 
カテゴリ:スポーツ障害 | 07:28 |
野球のスポーツ障害 (肩の障害編 vol4)

肩関節上方関節唇損傷(SLAP損傷) 



関節唇は関節窩縁の全周に付着していますが、最上部は上腕二頭筋長頭筋腱の起始部も含んでおり、上方の関節唇は可動性を有するゆるい結合となっております。

この部分に亀裂や剥離が生じたものがその損傷形態により、
肩関節上方関節唇損傷(SLAP損傷)として分類されており、比較的多く見られる肩のスポーツ障害です。







投球動作時、肩関節前方に痛みがあるときは肩関節上方関節唇損傷(SLAP損傷)上腕二頭筋腱損傷や肩腱板損傷、肩関節前方不安定症が疑われます。

投球フォームや各投球フェーズでの痛みをチェックすることにより、損傷部位を推定し、MRI
検査で診断を確定することになります。


上前方関節唇損傷では投球動作のコッキング期からアクセレレーション期に痛みが生じます。

上腕二頭筋長頭腱には、ボールをリリース、フォロースルー期において牽引張力が加わり、腱の付着部から断裂したり、上腕骨頭の溝で擦り切れて断裂することもあります。









肩関節が十分な機能を発揮するためには、肩関節包、腱板、滑液包、三角筋などの軟部組織の協調運動が必要であります。

したがって肩関節包、腱板、滑液包、三角筋により構成される肩関節の滑走機構のいずれに障害が発生しても肩機能には障害が発生します。

肩関節唇は膝半月板と同じく、関節の動きをスムーズに誘導する役割と、骨同士がぶつかる衝撃を和らげる働きをしていますが、度重なる外力(主に圧迫力)により断裂します。

一方、関節唇の前方を通る上腕二頭筋長頭腱は、二頭筋収縮時に牽引力が加わり、さらに上腕骨頭で角度を変えるため、溝(上腕骨二頭筋腱溝)で擦り切れていくのであります。

 
SLAP損傷は、高校生から大学生にかけて多くみられ、症状は投球時の疼痛がメインであります。「何か腕が抜ける感じがする。」と訴える選手が多く、投球時痛以外には、ほとんど陽性になる所見が乏しいのも特徴であります。








SLAP損傷の保存療法は腱板機能強化を中心にしたトレーニング、肩甲骨の協調運動を行っていき、投球フォームでも過角形成を起こさないようなフォームの獲得を目指す事になります。

腱板関節面の完全断裂を起こしてしまっている場合には、保存的療法での完治は難しく、競技レベルを考え手術を考慮する場合も多いのであります。










 
カテゴリ:スポーツ障害 | 07:24 |
野球のスポーツ障害 (肩の障害編 vol3)

回旋筋腱板損傷




投球障害肩は、腱板、関節唇および関節唇・関節包複合体や上腕二頭筋長頭腱、肩鎖関節などに損傷が生じ症状を呈するのですが、通常は単一部位ではなく複数部位の損傷が生じている場合が多く、肩の痛みの原因として、腱板損傷は非常に多く見られます。

回旋筋腱板は肩関節に安定性をもたらす、筋肉および腱の複合体、肩甲下筋(けんこうかきん)、棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょくかきん)、小円筋(しょうえんきん))のことです。
腱板損傷は擦り傷のような腱板炎の状態から、部分断裂から完全断裂に至るまで広い範囲が含まれています。








腱板損傷は、明らかな外傷がなくても次第に発生してくることが多いのですが、スポーツ中の怪我や交通事故などの外傷を契機に生じることがあります。

腱板損傷が発生しやすい理由は、肩関節の解剖を考えると理解できます。腱板はいわゆる球状関節の範疇に入り、肩甲上腕関節に安定性を与えています。
肩関節の運動方向により様々なストレスが、腱板を構成する腱および筋肉に加わります。








腱板において最も損傷を受けやすい部位は、肩峰の下にある肩峰下腔と呼ばれる狭い空間を通過しなければならない棘上筋腱であります。肩峰下腔が狭くなって腱板損傷を引き起こす原因については、

∞板炎(腱の炎症、腫脹)
滑液包炎(滑液包―肩峰下腔においてクッションとなり、また腱板の動きを滑らかにするー肩峰下滑液包の炎症と腫脹)
8峰あるいは鎖骨から下に向かって伸びる骨棘
じ朕佑慮峰の形の変異

などがあります。








肩峰下腔が狭くなればなるほど、腱板が挟まれるようになるインピンジメント症候群を起こします。
そして腱板が骨に挟まれ擦られるほど、腱板は刺激され腫れるようになります。この悪循環が結果として、腱板を損傷することになります。
この過程が繰り返されると、腱板の強度は低下し、そこに通常の力が加わることにより完全断裂を引き起こすことになります。








断裂は周りの筋に引っ張られ次第に大きくなります。特に高齢者では、腱の治癒能力が低下しており小さな断裂でも直りにくくなります。以前は50肩として取り扱われていた症例も、MRIなどの検査機器の発達により、腱板損傷として取り扱われるようになり年齢とともに進行します。
このように肩関節が緩くなったことを肩関節不安定症と呼びます。不安定症は腱板に加わるストレスを増大し、またインピンジメント症候群や腱板断裂を引き起こすことがあります。








腱板損傷も保存的治療が基本であり、インピンジメント症候群と同じように関節可動域と腱板機能の改善と肩甲骨との協調性の改善にあります。

もちろん症状が強い時にはノースローが必要になり、過角形成など投球フォームの不良を認める場合が多いので、体幹の回旋や下半身の使い方を指導する事は必要であります。保存療法には反応しやすく、治癒する可能性が高いので若い選手には、外科的手術ではなく、あくまでも保存療法を第一とすることが望ましいと思われます。

しかし、一方、完全断裂を起こした場合は、関節窩鏡などで腱板縫合手術を行う方が復帰の時期も考え効果が高いようです。


















 
カテゴリ:スポーツ障害 | 07:44 |
野球のスポーツ障害 (肩の障害編 Vol2)


 肩インピンジメント症候群

 
「インピンジ」は、日本語で言うと「衝突」という意味であり、症候群というのはシンドロームとも言われ、病名と考えていただければよいと思います。

肩を上げていくとき、ある角度で痛みや引っかかりを感じ、それ以上に挙上でなくなる症状の総称です。

基本的に、投球時痛がメインでありますが、悪化するとこわばりや筋力低下なども伴い、夜間痛を訴えることもあります。


肩を挙上するとき、あるいは挙上した位置から下ろしてくるとき、ほぼ60-120°の間で特に強い痛みを感じることがあり、有痛弧徴候(ペインフルアーク)といわれます。








 
野球などスポーツによる肩インピンジメント症候群は、大結節が肩峰にぶつかるのではなく、上腕骨が若干前方に偏位し、烏口肩峰靭帯にこすれて肩峰下滑液包の炎症を起こすのであります。骨形態の個人差として肩峰がもともと下方に突出している場合や、加齢変化として肩峰下に骨棘ができた場合にも炎症をおこすと理解されます。

上腕を外転する課程で、上腕骨と肩峰の間に腱板の一部や肩峰下滑液包などが挟み込まれ、繰り返して刺激が加わると滑液包に浮腫や出血が起こります。








安静にするとこの変化は正常に戻り症状は軽快しますが、動作の反復によっては症状の再燃を繰り返して慢性化します。進行すれば、時に腱板の部分断裂となったり、肩峰下に骨の棘ができたりして痛みがなかなかとれなくなることもあります。

基本的に、肩インピンジメント症候群は、ボールの投げすぎが原因でありますが、いわゆる手投げの状態を繰り返した結果、引き起される病態とも考えられ、実際、こうした選手の投球フォームは手投げとみられるケースが多く、投球フォームの改善が治療につながる場合も多いようです。


高校生から大学生にかけての若年者で、技術的に未熟な選手と、10年以上競技を続けたような競技レベルの高いベテランプレーヤーに多いのも特徴です。

治療の基本は肩関節可動域と腱板機能の改善と肩甲骨との協調性の改善にあります。年齢が若かくても頻度的には多く、もちろん症状が強い時にはノースロが必要になります。

投球フォームの不良を認める場合が多いので、体幹の回旋や下半身の使い方を指導する事は必要であります。保存療法には反応しやすく、治癒する可能性が高いので若い選手には、外科的手術ではなく、あくまでも保存療法を第一とすることが望ましいと思われます。

一方、競技歴の長いベテランプレーヤーには保存療法は効果があっても再発しやすく、肩峰形成の効果が高いようです。







 
カテゴリ:スポーツ障害 | 19:36 |
野球のスポーツ障害 (肩の障害編)

 肩の障害編 vol1


此の度、当院のHPがリニューアルしたのでありまして、それもこれもウエブマスターのご尽力によるところが大きいのであります。
で、「内容も充実させなければ。」というマスターの厳命のもと、私もスポーツ障害の原稿を書きためた次第であります。少しずつですがこちらからアップしてまいりますので、ご参考になれば幸甚であります。


まず言っておかなければならないのは、投球動作というものは、肩や肘に大変な負担をかけている。という事なのであります。

1995年にGlennらが、コッキングからボールリリースまで0.139(±0.017)秒という非常に短い時間の中で、静止していたボールに150km近いスピードまで力を伝える動きが投球動作であり、この投球の動きの中で、関節に負担のかかる瞬間が2カ所あると報告しています。

1回目は投球方向側の足が接地し、体幹から上肢までの動きを使ってボールを前に動かしていく瞬間、2回目はボールをリリースした直後に急速に減速する瞬間であります。

1回目には44Nmの外転、87Nmの水平外転、67Nmの内旋方向のトルクが肩関節に加わり2回目のボールをリリースする瞬間には950Nの引っ張られる力が肩関節に作用し、ボールがリリースした後には1090Nの圧迫される力が肩関節に作用するとされています。

成人の前方関節包の強度が800〜1200Nとされているので、投球する度に壊れるギリギリの力がかかっていることになり、成長期に投球を行っていた選手では、骨成長にも当然影響が出ると考えられます。(ちなみに、1N(ニュートン)は、だいたい100gの物を持ったときの手に感じる力ですので、投球する度に約100kgの負荷がかかっていることになる。)

この負荷に耐えるために、体は微妙なバランスで投球フォームを形成しております。しかし、コンディショニング不足や疲労などからフォームが乱れてくると、この100kgの負荷が関節を壊し始めてしまうのであります。



            




投球動作は、足のつま先から手の指先まで協調した動作によってなされ、この連続した動作を運動連鎖と呼んでおり、肩や肘にかかる負担が最小限の状態で、速いボールを投げるためには、下半身から体幹、肩甲帯、上肢、指先へと連続する効率の良いスムーズな運動連鎖が必要となります。

しかし、コンディショニングの不良や、オーバーユースによる疲労、スキル不足などによって、運動連鎖の上流にあたる部位の機能が低下すると、その下流にあたる部位では、上流での機能低下を補おうとするためにストレスが増大し、障害発生につながります。

特に股関節や体幹、肩甲骨周囲に問題が生じることで、肩や肘に過剰な負荷がかかり障害が発生している場合が多いのであります。


加速期における体幹の運動は、ほぼ非投球側を回転中心とした回転運動であり、投球障害を有する肩関節では、この回転運動の破綻認めるのであります。

このような障害発生には運動連鎖の破綻が密接に結びついており、肩関節痛で来院しても実際は腰をかばって投球していたり、肘をかばって投げていて結果的に肩関節痛を引き起こしているケースが多いのであります。


施術計画の最初は肩や肘のどこに病変があるのか、どうしてそこに病変が起こるのかを、野球歴、ポジション、環境、練習内容などを吟味しながら探っていく事が必要になるのであります。






                                           
カテゴリ:スポーツ障害 | 18:32 |
野球を科学する (障害編 Vol 4)
 
 野球肘 [4]

         


今回は野球肘の4回目。施術前と3ヶ月後の画像を使い、比較してご紹介しようと思っております。

今回の例は「野球肘内側型」で来院された中学生のもので、小学生から硬式野球チームに所属しており、中学に進み、硬式野球クラブチームに所属。小学生の時より投球の量が増え、距離が長くなったためか肘を痛めて来院。

発育型野球肘・内側上顆骨端核が離開したものであり、ROM(関節可動範囲)の障害を伴い強い疼痛の訴えがありました。
来院時にCT撮影を行い(野球肘2に画像使用)状況としてはあまり芳しくなかったので、3か月の投球禁止と、離開した骨端核の圧迫固定とリハビリを行い、3か月後にCT撮影を行ったのであります。






(画像1) 

CTの3D画像でありますが、○の部分を見て頂くと、施術前に比べ、3ヶ月後は骨の丸みが増え、骨膜が滑らかになり、表面の凸凹も少なくなっているのがお分かり頂けると思います。







(画像 2)

CTの横断面画像であります。○の部分、施術前と3ヶ月後を比較して頂くと、明らかに隙間が狭くなっているのがお分かり頂けると思います。








(画像 3)

CTの縦断面画像であります。こちらも○の部分を比較して頂くと、骨との隙間が狭くなっているのがお分かり頂けると思います。


施術としては、まず関節の可動制限を取り除く事が必要であります。まずはそのリハビリを行ったのでありますが、可動制限が強い場合は、完全伸展位や完全屈曲位が取れなくて制限が残る場合があります。
今回の場合は正常なROMを取り戻し、骨端核も正常に戻ったのでありますが、通常時に、当院で作ったオリジナルテーピングパッドをあて、骨端核を圧迫し通常の位置に戻すようにしたのが良かったようであります。まぁ、本人もずいぶん辛抱したと思いますが、、、

投球禁止の期間の3か月が、長いのか短いのかは判断が分かれる所かとは思いますが、将来の事を考え、禁止期間は長めに設定するようにしております。

このCT画像の選手ですが、その後、練習に復帰。1年半経過しもうすぐ2年になりますが、肉離れや足の故障で来院しましたが、肘の痛みの訴えはありません。
小学生や中学生の野球選手の場合、肘の故障で野球を断念する割合が多いのであります。くれぐれも、選手が肘に痛みを訴えたら安直に考えず、すぐにしかるべき医療機関を受診して頂くようにお願いしたいと思っております。

一生のうちの3か月や半年。障害を持って一生を終える事を考えたら、短い期間だと思います。




           




カテゴリ:スポーツ障害 | 23:57 |
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