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ドリーへのレクイエム


2003年2月14日。恋人達が愛を確かめ合っている中、ドリーは安楽死させられました。世界初の体細胞クローンで生まれたほ乳類ドリー。6歳7ヶ月というのは、平均的な羊の半分近い短命でありました。
ドリーは、若い時から関節炎を患っていたりして、早くから老化が危惧されていました。体細胞テロメアの長さから、体細胞を供与した親の年齢(6歳)を引き継いだと言われていましたから、やはり・・。という感は否めませんでした。

ドリーには父親が居ません。ドリーには母親が三頭いますが、父親となった羊は居りません。それまでほ乳類は、人間を含め、通常の有性生殖はもちろんの事、人工受精にせよ、体外受精にせよオスの精子が絶対に必要でした。しかし、ドリーの誕生にはまったく精子が使われておりません。見た目はまったく普通の羊でありながら、通常は半分受け継ぐはずのオスの遺伝子は、ドリーには存在していない事になります。

最近、ARTで生まれた子供達の悩みや訴えが、大きく取り上げられるようになりました。
「本当の父親を知りたい!」
それは至極当たり前の気持ちだと思います。生まれた時から本当の両親だと思っていたのが、突然、父親はまったく違う人間だと聞かされた子供の心中はどうでしょう?その衝撃は大変なものだと思います。
血の繋がった母親から、離婚を期に教えられるというのが圧倒的に多いそうですが、これもどうなんでしょう?
子供が欲しいけれど生まれない。夫以外の精子で子供を作り、そして夫婦の子供として育てる。そう決断したのなら、その生誕の秘密は教えないべきでは・・・。精子を提供する男性のほとんどが、自分の身元を教えて欲しくない。と言っている現状なら、尚更そうして欲しいと思うのは私だけなのでしょうか・・・。
アメリカのように精子バンクに登録してある名簿から、「私は天才の子を!」とか「私は二枚目の子を!」とか、チョイスできる大らかさは日本の土壌にはないような気がします。
子供達が自分のなかに歴然と存在する、50%の遺伝子を、誰から受け継いだのかを知る権利は、いったい誰が保証するんでしょうか。難しい問題だと思います・・・。

世界に衝撃を与えたドリーですが今は静かに眠っています。ドリー誕生後には色々な事が研究され、色々な種類のほ乳類も誕生しました。クローン人間も誕生した!などと言われたりもしましたが・・。ES細胞の研究が盛んに行われるようになったのも、ドリー誕生以降であります。
羊の乳腺細胞から生まれた事から、豊かなバストで知られるアメリカの歌手ドリー・バートンにちなんで名付けられたドリーです。
ドリーの救いは、父親が誰かを心配する必要がなかった事ではないでしょうか。
カテゴリ:医療のお話 | 23:29 |