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野球を科学する (トレーニング編 Vol1)
長年この仕事に携わり、そして野球選手に関わってまいりました。そんな中、気がついた事などを少しずつ書きためたものでして、この際ブログに発表してみようか、、、考えました。
トレーニングの基礎からスポーツ障害に至るまで多岐に渡るとは思っているのですが興味がある方はご一読頂ければ幸甚です。




【1鍛えるとは】

 (言葉の意味)

 英語辞典によれば、トレーニングの動詞のトレイン(train)は17世紀はじめころは、動物を命令にしたがわせようにするとか、芸をやるように教育・訓練する、あるいは競走馬をレースに向けて準備させる場合に使われていたといます。そして18世紀中頃、食事と運動によって、スポーツの試合に向けて身体効率を指摘水準に到達させる意味に使われたとあります。
 英和辞典によれば、トレインは、他動詞として、[仕込む、鍛える、養成する]また自動詞として、[体を慣らす、鍛える]と訳されています。それゆえ、トレインは[鍛える]と考えてよいのでありましょう。

 国語事典によれば、[鍛える]は[金属を火で熱し、また水に入れて打ち、その密度を細かくしてその硬度を強くする][度々苦しい目にあわせて心身を強くする]とあり、鍛えるの名詞である[鍛錬]は、スポーツの世界で使われるトレーニングという言葉の意味を充分に表しているものと思われます。




 (適応能力)

 トレーニングという事が成り立つのは、生物に適応能力があるからであります。適応とは、時間をかけて生物が外界に適合するように、習性・形態などを変えていく事をいいます。
 例えば、裸足で歩いていれば、足の裏の皮膚はしだいに強靱になっていき、足の指を頻繁に使っておれば手指と変わりなく使えるようになっていきます。

 1960年ローマオリンピックで、エチオペアのアベベ選手はランニングシューズを履かずにマラソンで優勝して、「裸足の王者」の異名を取ったのは有名な話であります。少し新しい所では、1984年ロサンゼルスオリンピックで、転倒事件を起こし話題となった南アフリカ出身の女性長距離ランナー、バット選手も裸足で走っておりました。

 現代の日本人は、いつも靴下を履き、靴を履いて歩いているので、足の裏の皮膚は弱く、裸足で歩いたり、走ったりすればたちまち傷がついてしまいます。現代の日本人がフルマラソンを裸足で走りきろうとするならば、適応するには結構な期間を要するのでありましょう。

 また、南アメリカのアンデス山脈の高地に住む人々は、稀薄な空気からよりたくさんの酸素を取り入れやすいように血液中のヘモグロビン濃度が高いのであります。例えば、海抜3600mの高地に住む人は18・8mg/dlであるといいます。

 日本人の水泳選手やマラソン選手が、2300mの高地(メキシコ市など)で3週間ほど滞在してトレーニングを続けたとします。すると、体内のヘモグロビン濃度はしだいに高まっていくのであります。(女子選手平均で、13・1から14・1mg/dl)このようにトレーニングをして低地に戻ってくると血液中に酸素を取り込みやすくなっているので、距離の長い種目まどでは、自分の記録を更新しやすくなるのであります。

 もうひとつの例として、筋肉の太さに注目してみます。
 骨折などで関節をギプスで固定されると、その周辺の筋肉は活動する事ができず急速に萎縮していってしまいます。その反対に重い物を持ち上げるといった仕事(運動)を繰り返していると筋肉は肥大していきます。
 スポーツ選手にとっては、萎縮していく事は筋肉がマイナスの適応を示した事になり、肥大していく事はプラスの適応を示したといえるであります。



 野球に於いても、トレーニングは重要な要素であります。しかし、過度のトレーニングにより障害を引き起こす事も多々見受けるのであります。

 例えば、走る過ぎる事により、シンスプリントから疲労骨折。中にはコンパートメント症候群に陥っている選手など見受ける事があります。野球選手が走る事により下半身の粘りを強くしたり、心肺機能の向上など必要な要素であると思うのですが、トレーニングの目的をしっかり持って行う事が望ましいと考えております。


                           【次回に続く】
カテゴリ:スポーツの話 | 22:19 |