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野球を科学する (トレーニング編 Vol 5)




【2 エンジンとしての筋肉】

 (運動を引き起こす力)

トレーニングの内容である運動は、力によって引き起こされます。
人間のかかる運動では、その力は便宜的に2つに分ける事ができるのですが、1つは能動的な力であり、運動しようとする人間の意志に基づいて起こる筋肉の収縮であり、調整可能な力であります。
もう1つは、受動的な力であり、運動しようとする人間の意志によってはほとんど調整する事ができない、重力とか浮力であるとか、あるいは風(空気)や水の抵抗といった力であります。

この2つの力とトレーニングの関係を自転車に乗る事で考えてみます。
平地を走る時は空気の抵抗と、タイヤと地面の摩擦抵抗とに見合う力を筋肉が発揮すればよいのですが、自転車に乗って坂を降りる時は、上記の抵抗以上の力が重力から得られ訳ですから、こぐという力を筋肉が発揮しなくてもしだいに加速していきます。
反対に坂を登って行く時は重力に抗してペダルをこがなければならないので、平地を行く時以上の力を筋肉は発揮しなければなりません。
このように、トレーニングの内容である運動とは、受動的な力に対抗して、能動的(筋肉の収縮)を発揮するという事なのであります。



 (力を発揮する筋肉)

自転車に乗ってペダルをこがずに坂道を下っていく運動は、トレーニング効果をもたらしません。
筋肉を肥大させ、力強さやねばり強さを増大させる基本因子となる運動とは、すべて筋肉が収縮する事によって発揮された力の上に成り立つのであります。
走る・跳ぶ・投げるといった全身運動から、編み物のような手先の動きだけによるものまで、すべて必要な筋肉が収縮し、骨がたがいに動かされる事によって可能となるのです。

人間の筋肉は、心臓以外の内臓諸器官の壁を形作っている平滑筋、心臓壁を構成している心筋そして骨格筋の3つに分類されます。
これらの筋肉の中で、スポーツなどの体の動きを直接的に生み出しているのは骨格筋であり、平滑筋と心筋は不随意筋と呼ばれます。他方、骨格筋は神経を介した大脳から伝達される指令によって収縮が調整され、そのため、骨格筋は随意筋とも呼ばれるのであります。

人体には400種以上の骨格筋があります。ほとんどの骨格筋は両端の腱によって、1つ以上の関節をまたいで、異なる骨にそれぞれ付着しています。それゆえ、筋肉が収縮すれば、関節を中心として、骨が引き寄せられるように動く事になるのであります。




【摘要】

(野村ノート)

野球選手からトレーニングの相談を受けるのですが、そんな中で多いのが、「どうしたら関節の可動範囲がひろくなりますか?」というのがあります。
体の柔軟性を向上させるという事は非常に重要な要素ですが、投手が、「肩関節の可動範囲を広げたい。」という相談をしてきたら、「ちょっと待って。」ワンクッション、必ず置くように心がけております。

そういった選手が相談してくるのが、「投手は肩関節、特に肩甲骨がよく動く方が関節の可動範囲が広くなり球速は増し、球の出所が見えにくくなり、打者からは打ちにくい。」と、マスコミ情報を耳にして、「だったら自分もそうなりたい!」特定のプロ野球選手の名前を出して、トレーニング法を聞いてきたりするのです。

確かにその通りであり、活躍しているプロ野球選手がいるのも事実であります。しかし、その、「肩関節の可動範囲が広い」ために、スポーツ障害に悩み、投手や、中には野球自体を諦めた選手を多数目の当たりにしてきたのも事実でありまして、「肩関節の可動範囲が広いとスポーツ障害に陥りやすい。」という事実を伝え、「筋力が発達してない間は無理しないでエエんちゃう。」とトレーニングには非協力的なのでありました。

で、先日、元楽天監督の野村監督が執筆された、「野村ノート」を拝読する機会に恵まれたのでありますが、その中に、「個人主義が結集してチーム優先となる」という項目があり、その中で、「伊藤智」投手の事に触れていたのであります。

その内容は、「伊藤智」投手を、対戦相手だった当時広島に在籍していた金本選手が絶賛したという逸話を紹介し、野村監督も「伊藤智」投手の事を、「投手としてすばらしい資質、財産をもっている。」と褒めていたのですが、しかし、「このすばらしい資質が彼の投手としての寿命を縮めてしまった。」と触れています。
「すぐに肩痛が起こる。関節には可動域というのがあるが、彼はその可動域が他の投手よりはるかに広いがために、腕全体がバネのようになってあのすばらしい球を生み出していた。
だが、負荷がかかりすぎて炎症を起こしたり腱を痛めやすい。しかも可動域が広すぎることから炎症部付近の神経がその炎症部に触れてしまうのだ。」
結局、「伊藤智」投手は何度か故障を繰り返し長期離脱せざるをえなくなり、復活して好投したかと思えば、また痛みが再発してすぐに治療、リハビリの生活に戻ってしまったのだそうで、
「本当にもったいないというか、不運な野球人生となってしまった。」と、野村監督も残念がっておられたのでありました。

実際、この肩関節の可動範囲が広い選手は多いのでありまして、その特徴を伝え、それによって障害を発生しているのであれば、小さなフォームに改善する事を伝えるようにしております。

くれぐれも、、、マスコミや雑誌の一部を鵜呑みにして、間違ったトレーニングを行わないようお願いしたいのであります。

カテゴリ:スポーツの話 | 00:06 |