<< 医師川柳 | main | 野球のスポーツ障害 (肩の障害編 Vol2) >>
野球のスポーツ障害 (肩の障害編)

 肩の障害編 vol1


此の度、当院のHPがリニューアルしたのでありまして、それもこれもウエブマスターのご尽力によるところが大きいのであります。
で、「内容も充実させなければ。」というマスターの厳命のもと、私もスポーツ障害の原稿を書きためた次第であります。少しずつですがこちらからアップしてまいりますので、ご参考になれば幸甚であります。


まず言っておかなければならないのは、投球動作というものは、肩や肘に大変な負担をかけている。という事なのであります。

1995年にGlennらが、コッキングからボールリリースまで0.139(±0.017)秒という非常に短い時間の中で、静止していたボールに150km近いスピードまで力を伝える動きが投球動作であり、この投球の動きの中で、関節に負担のかかる瞬間が2カ所あると報告しています。

1回目は投球方向側の足が接地し、体幹から上肢までの動きを使ってボールを前に動かしていく瞬間、2回目はボールをリリースした直後に急速に減速する瞬間であります。

1回目には44Nmの外転、87Nmの水平外転、67Nmの内旋方向のトルクが肩関節に加わり2回目のボールをリリースする瞬間には950Nの引っ張られる力が肩関節に作用し、ボールがリリースした後には1090Nの圧迫される力が肩関節に作用するとされています。

成人の前方関節包の強度が800〜1200Nとされているので、投球する度に壊れるギリギリの力がかかっていることになり、成長期に投球を行っていた選手では、骨成長にも当然影響が出ると考えられます。(ちなみに、1N(ニュートン)は、だいたい100gの物を持ったときの手に感じる力ですので、投球する度に約100kgの負荷がかかっていることになる。)

この負荷に耐えるために、体は微妙なバランスで投球フォームを形成しております。しかし、コンディショニング不足や疲労などからフォームが乱れてくると、この100kgの負荷が関節を壊し始めてしまうのであります。



            




投球動作は、足のつま先から手の指先まで協調した動作によってなされ、この連続した動作を運動連鎖と呼んでおり、肩や肘にかかる負担が最小限の状態で、速いボールを投げるためには、下半身から体幹、肩甲帯、上肢、指先へと連続する効率の良いスムーズな運動連鎖が必要となります。

しかし、コンディショニングの不良や、オーバーユースによる疲労、スキル不足などによって、運動連鎖の上流にあたる部位の機能が低下すると、その下流にあたる部位では、上流での機能低下を補おうとするためにストレスが増大し、障害発生につながります。

特に股関節や体幹、肩甲骨周囲に問題が生じることで、肩や肘に過剰な負荷がかかり障害が発生している場合が多いのであります。


加速期における体幹の運動は、ほぼ非投球側を回転中心とした回転運動であり、投球障害を有する肩関節では、この回転運動の破綻認めるのであります。

このような障害発生には運動連鎖の破綻が密接に結びついており、肩関節痛で来院しても実際は腰をかばって投球していたり、肘をかばって投げていて結果的に肩関節痛を引き起こしているケースが多いのであります。


施術計画の最初は肩や肘のどこに病変があるのか、どうしてそこに病変が起こるのかを、野球歴、ポジション、環境、練習内容などを吟味しながら探っていく事が必要になるのであります。






                                           
カテゴリ:スポーツ障害 | 18:32 |