野球を科学する (障害編 Vol 3)
野球肘[3]



           



野球肘の3回目。今回は外側型について書いてみたいと思います。
外側型は、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎、肘離断性骨軟骨炎、上腕骨小頭骨軟骨障害とも呼ばれ、小学校高学年から中学校低学年に初発することが多く、野球肘外側型障害の代表的なものです。
繰り返す投球動作における外反ストレス(野球肘Vol1、Vol2参照)により、上腕骨小頭(肘関節を形成する上腕骨の遠位端の外側部の球状の部位)の骨軟骨が変性、壊死(組織が生きて行けなくなること)を生じるもので、病名に「炎」とありますが実際には炎症性の疾患ではありません。

症状としては、肘関節の運動時痛(伸展・屈曲時に生じる痛み)や可動域制限(動きの制限)が主な症状です。
症状が進行すると、病巣部の骨軟骨片が遊離して関節内遊離体(関節内を移動する状態になることで、関節ねずみとも呼ばれます)になると、引っ掛かり感やロッキング(遊離体が関節の中に挟まり、肘関節がある角度で動かなくなること)を来し、滑膜炎と呼ばれる関節内の炎症を起こすこともあります。

上述の症状に加え、上腕骨小頭部(肘関節の外側部)の圧痛があるケースでは本疾患を疑います。
確定診断はレントゲン撮影により行います。病巣は、初期には透亮像(骨の陰が薄くなった状態)
進行すると分離像、遊離像(病巣部の骨軟骨片が上腕骨小頭から分離、剥がれる状態)として撮影されます。
しかし、初期には病変を認識することが難しいこともあります。また、一般に行われる肘関節2方向撮影(正面と側面)では病巣を描出しにくいことが多く、本疾患を疑った時には、CTやMRIが診断や病態を調べるのに有効です。

本疾患はレントゲンによる病巣の状態により(1)透亮期、(2)分離期、(3)遊離期の3つの病期に分けられます。しかし、レントゲンの所見と実際の病態は必ずしも一致せず早期発見のためにはレントゲンだけではなく、CT,MRIによる撮影診断をお勧めいたします。


          上腕骨小頭離断性骨軟骨炎進行図

      
      (画像が見にくいため画像をクリックしてご覧下さい)






     

,硫菫は当院に来院された、外側型野球肘、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の選手のレントゲン画像であります。一見すると、内側型に思えるのですが、圧痛は外側にあり、画像の○印が付いている骨の面も、多少デコボコしているのが判別出来ると思います。




     




     



画像↓については、,離譽鵐肇殴鷸1討鬚靴秦手のMRI画像であります。上記の、「上腕骨小頭離断性骨軟骨炎」の進行図にある透亮期であるのがご理解頂けると思います。
MRI画像で、△良汁悗肋さく、の深層に至ってはかなり透亮の面積が広くなっているのが分かり、おそらく分離する一歩手前だったのではないかと思います。
この選手は、半年間以上、一切の投球を行わず復帰したのでありますが、野球肘の場合、早期発見、早期治療が復帰の早道ですし、将来に障害を残さないためにも痛みを感じたらすぐに、専門の病院を受診する事をお勧めいたします。

ただ、,鮓ても分かるように、「レントゲン写真は問題ありません。」というような状況でも、MRI画像では異常を発見する場合があります。
出来れば、スポーツ障害に詳しい所に受診される事をお勧めいたします。


次回は野球肘の治療前と治療後の画像を中心に書いてみたいと思います。




カテゴリ:スポーツ障害 | 19:01 |
野球を科学する (傷害編 Vol 2)
野球肘 [2]





プロ野球も日本一が決定し、プロ野球選手は、一年間プレーした身体を休め、自らの身体のケアに勤しんでいる時期であります。
プロの選手であってもアマチュアであっても、障害を抱えると十分なパフォーマンスは発揮できませんし、痛みに苦しまなければなりません。プロの選手もこのオフの時期に十分なケアをしなければ、来シーズンに間に合わない場合もあり、この時期になると選手の手術等のニュースを目にするのが増えるのであります。

野球肘の2回目、まず、野球肘とはどういうものか。という事なんですが、、、投球動作の繰り返しによって肘関節に生じる疼痛性障害の総称で、その中には肘関節の多くの病変が含まれます。発症の時期により、まず、二つに分けられます。

発育型野球肘:成長途上の骨端(骨の両端にある軟骨や成長線を含む部位)を中心とする骨軟骨の障害。

成人型野球肘:成長完了後の関節軟骨や筋腱付着部の障害。

また、障害の部位から内側型、外側型、後方型に分類されます。

1.内側型野球肘
投球動作では、コッキング期からアクセレレーション前期に腕が前方に振り出される際、肘に強い外反ストレス(肘を外側に広げようとする力)が働き、さらにその後のアクセレレーシュン期からフォロースルー期には、手首が背屈(手の甲側に曲がること)から掌屈(手のひら側に曲がること)に、前腕は回内(内側に捻ること)するため、屈筋(手や指を手のひら側に曲げる筋肉)・回内筋(前腕を内側に捻る作用を有する筋肉)の付着部である上腕骨内側上顆(肘の内側にある骨性の隆起)に牽引力が働きます。
この動作の繰り返しにより、内側側副靭帯損傷、回内・屈筋群筋筋膜炎(肘内側に付着する筋腱の炎症)、内側上顆骨端核障害(内側の成長線の障害)などが起こります。

2.外側型野球肘
投球動作のコッキング期からアクセレレーション前期における外反ストレスによって、腕橈関節と呼ばれる肘関節の外側に圧迫力が働き、さらにフォロースルー期で関節面に捻りの力も働きます。
このストレスの繰り返しにより生じるのが外側型野球肘であり、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎、橈骨頭障害などがあります。

3.後方型野球肘
投球のコッキング期における外反ストレスと減速期からフォロースルー期にいたる肘関節伸展強制によって、肘頭(前腕の内側側の骨である尺骨の近位端で、肘を曲げたときに後方に突出する部位)は上腕骨の後方にあるへこんだ部分(肘頭窩)に衝突するようなストレスを受けます。
この動作の繰り返しにより、肘頭疲労骨折や骨棘形成(衝突により反応性に骨、軟骨の増殖、隆起が生じるもの)が起こります。

基本的にこういう分類になるのですが、今回は、主に内側型野球肘について書いてみたいと思います。今年一年、当院に来院された野球肘の患者さん、内側型のCT、MRI画像を元に説明したいと思います。










まず、´△砲弔い討任垢、中学生野球選手のCT画像、CT3D画像です。発育型野球肘であり、内側上顆骨端核が離開し、骨端核障害に陥る可能性があります。








い癲中学生野球選手であり、CT画像、CT3D画像であります。´△汎瑛佑法発育型野球肘であり、内側上顆骨端核が離開し、骨端核障害に陥る可能性があります。








キΔ砲弔い討任垢、上の二人と違い、大学生の投手のCT画像であり、成人型野球肘、Δ痢印の通り筋腱付着部の骨片が離れております。






Г話羈慇弧邉總手のCT画像であります。´と見比べて頂きたいのでありますが、同じ右肘であり、ほぼ同学年であり、CT画像も同一箇所あたりを切り取ったのでありますが、それぞれ、見事に肘関節の形が違う事に気づいていただけますでしょうか。






┐詫0譴両学生、MRI画像であります。´Р菫と比較して頂きたいのですが、内側上顆骨端核は離開しておりますが、肘関節の関節面が整っており、そんなに肘関節に負担がかかっていない事が分かります。


今回中学生を中心に内側型の画像を見て頂いたのですが、痛みを我慢して練習を続けた場合、内側上顆骨端核が離開し、骨端核障害を起こし、将来肘関節の変形や疼痛に悩まされる可能性を理解して頂きたいのです。

次回は、野球肘外側型を中心に掲載したいと考えております。

カテゴリ:スポーツ障害 | 00:11 |
野球を科学する (障害編 Vol 1)
野球肘 [1]




野球での障害、野球肘は、来院される選手の割合は非常に高いのであります。その障害の程度に差はあるとしても、その不安や苦悩は選手や保護者を苦しめていると思います。
実はわたくしの息子も小学校1年生から野球を始め、3年生の終わりに硬式、リトルリーグにに転向し、中学生の現在もシニアリーグで硬式野球に励んでおります。
そのお陰というのも何でしょうが、息子が練習に励んでいるのを垣間見て、少年野球指導者というのを目の当たりにして、息子のチームメートも多数治療にあたるという経験も積ませてもらいました。
院に来院した患者さんを治療するだけ。というだけでは得る事が出来ない貴重な体験だった、と息子に密かに感謝するのですが、こうすれば、、、という歯痒い思いをしたのも事実であります。
完成されたプロや社会人、それを目前にした大学野球の選手。甲子園を目指し打ち込む高校野球の選手。それらの原点となる、野球を始めた小学生達。そこでの障害は将来の夢を閉ざす可能性もあります。
それを減らす一助になればと願い、何かの参考になれば幸甚であります。




(画像をクリックして頂ければ大きくなります)

上記は、ボストンレッドソックスの松坂投手の投球時の連続写真であります。プロであるそれも松坂投手の写真を使った理由は後述するとして、投球動作は基本的に4期に分けられるのであります。

.錺ぅ鵐疋▲奪

▲灰奪ング・フェイズ

アクセレレーション・フェイズ

ぅ侫ロースルー・フェイズ

アクセレレーション・フェイズは前期と後期に分けられるので、説明は前期と後期でいたします。







上記の写真は、連続写真のコッキング・フフェイズの部分を切り取り拡大したものです。
この時、肩関節は過伸展、外転、外旋位がとられ、肘関節は外反しているのが分かると思います。





上記の写真は、連続写真のアクセレレーション・フェイズ(前期)の部分を切り取り拡大したものです。
この時、肩、肘が前方に出て、前腕と手が後方に残っております。この時期に肘関節の外反ストレス(肘関節内側の牽引、外側の圧迫)が強制されます。





上記の写真は、連続写真のアクセレレーション・フェイズ(後期)の部分を切り取り拡大したものです。
ボールのリリースまでの投球動作にあたり、肩はスピードをもって内方へ回旋され、前腕や手が丁度、ムチ状にしなって前方にスナップされるのであります。





上記の写真は、連続写真のフォロースルー・フェイズの部分を切り取り拡大したものです。
ボールのリリースはムチ状にしなった前腕が回内しながら前方に振り出されます。この時、肘関節には上腕骨外顆部や肘頭部に圧迫や牽引などのストレスが生じやすいのであります。



写真を見て頂くと、コッキング・フェイズからアクセレレーション・フェイズ、そしてフォロースルー・フェイズと一連の動作で肘関節に負担がかかっているのがお分かりになると思います。
野球肘の場合、内側型と外側型に分類されます。障害の詳細は次回より書くつもりなのですが、この投球フォームでのストレスのかかり方を知っていただくと理解しやすいと思います。




で、松坂投手の写真を使用した理由についてなのですが、、、

松坂投手は押しも押されもしない日本のエース。WBCでも最優秀選手に選ばれ、甲子園での優勝投手。日本プロ野球界での活躍、メジャー移籍と野球少年の憧れの的であると思います。
写真を使用したのも投球に問題があるとかそういう事ではなく、凄い選手の投球フォームは真似したりとか、その投球を研究したりするのではないかとと思うのです。
実際、コマーシャルに松坂投手のスローでの投球が出たり、番組を見たら投球フォームの解説がスローでされたりします。つまり、苦もなく松坂投手の投球を目の当たりにして真似をする事が出来るという事であります。

我が子を松坂投手のように、、、とか、教え子を松坂投手のように、、、思っても不思議ではないし、期待するのは親として当然ではないかと思います。
しかし、、、筋力もなく、骨も発育途中、骨化も充分されていない小学生にプロ野球選手の投球フォームを真似させたり、投げ方を教えたりするというのはどうだろう、、、わたくしは問題があると思うのです。

松坂投手といえばジャイロボールが有名です。ボールに対する抵抗が、従来のボールにバックスピンをかけるボールよりも少ないと言われ、螺旋回転するボールであります。

実は、息子が小学校4年生の時、チームのコーチがジャイロボールの投げ方を教えていたのでありました。そのコーチは早々に辞めて、個人的に、良かった、、、思ったのでありましたが、その時は随分と考えさせられました。
チームの方針として、「父兄は指導に口を挟まない。」という決まりがあり、「その投げ方は小学生の肘関節に負担になるから止めて欲しい。」とも言えず、息子に、「言う事を聞くな。」と言えば試合に出してもらえず、、、
チームを辞めるしかないのか・・・家族で考えたものでありました。よく、治療に来られた患者さんに、「そんなコーチの言う事は聞かなくて良いから!休んだらエエやないか。」言っていたのですが、チームに入ると難しいモンだ。よく理解出来たのでありました。

少し余談になりました、、、
個人的な見解ですが、小学生の間、成長が遅いとか、細身であるとか、身体的に差があります。いくら運動能力が高くても、見たり聞いたりしたプロ野球選手のトレーニングをそのまま取り入れたり、投球フォームをそのまま真似をさせたりするのは、小学生の体には負担が大きいと思います。
指導者の方、ご一考頂けたら嬉しく思います。


                            【次回続く】
カテゴリ:スポーツ障害 | 02:07 |
膝の外傷


久しぶりにスポーツ障害のお話しです。
どんなスポーツに関わらず、膝の障害を受ける可能性はある訳で、その障害についてです。

【膝の解剖図】

膝の障害といえば、主に、内側側副靱帯損傷、前十字靱帯損傷、半月板損傷がいわれる訳なんですが、この3つを同時に痛めたものを、「アンハッピー・トライアット」と言います。読売巨人軍の小久保選手が有名ですが、通常では、この3つを当時に痛めると、競技の復帰は難しいと言われております。
そう考えると、小久保選手の活躍は驚異であります。
では、順にご説明いたします。


【内側側副靱帯損傷】
★傷害の原因
内側側副靭帯は膝の内側に位置し、大腿骨と脛骨をつないで膝の内側へのずれを防いでいる靭帯です。
基本的に、下腿が固定され、上体に捻れが加わった状態で損傷されます。
例えば、バスケットで、片方の足を軸に体を回旋している時に外力を受けて損傷したり、スキーなどで滑降中、膝が強く外へひねられたとき(外反)に損傷が起こります。
また、外反とは逆に強い内反で、外側側副靭帯を損傷するケースもあります。ケガの程度は靭帯の損傷の程度に応じて1度(軽症)から3度(重症)に分類されます。

★症状
膝の内側の痛み、特にひざを外から内側へ押したときに痛く、膝を完全に伸ばすことも困難になります。完全断裂の重症(3度)では膝が安定感を失い、ぐらぐらと不安定になります。
また、体表面に近い靭帯なので腫れも目立ち、数日経ってから出血することもあります。何も治療せずにほうっておいても痛みや腫れは一定期間で無くなる場合がありますが、関節の不安定感は残り、慢性化へとつながります。
この安定感を欠いた膝で競技を続けると、ちょっとした外傷で、重傷の「アンハッピー・トライアット」を起こす危険性もあり、注意が必要です。

★対処法
内側側副靭帯の損傷では、よほどひどくなければ包帯やギブスなどによる安静だけで完治させることが可能です。
しかし、関節の動揺がある訳ですから、リハビリをしっかり行い、筋力をつける事が必要になります。



【前十字靱帯損傷】
★障害の原因
膝の靭帯損傷としては多い損傷です。前十字靭帯は膝の前面で大腿骨と脛骨をつなぎ、下腿が前へずれないように保持しています。
力一杯ボールを蹴ろうとして失敗して痛めたり、ジャンプをして、着地の際の衝撃で切れてしまう場合があります。
単独の損傷というのは少なく、側副靱帯と一緒に痛めたり、半月板損傷を伴ったりと重傷になる場合が多いようです。

★症状
靭帯が切れた瞬間、ポキッというような断裂音があり、膝を抱えてうずくまってしまうほどの激痛が走ります。
受傷直後から腫れを認め、関節の中に血が溜まったりします。
怪我をしてからしばらくは疼痛で歩行も困難であります。
まぁ、中には2週間もすれば痛みが治まってくるものもありますが、放置をすれば、内側側副靱帯損傷と同じで慢性に移行します。

★対処法
まず、前十字靭帯損傷の疑いが少しでもある場合はすぐに専門医の診察を受ける事です。慢性化すると膝の関節は安定感を失い、競技スポーツに復帰する事が難しくなってしまいます。
損傷の程度・競技の内容によっては手術するしか方法がないこともあります。基本的に単独損傷は少ないので、専門医と相談して治療方針を決めるのが望ましいでしょう。



【半月板損傷】
★傷害の原因
半月板は三日月型をした軟骨の板で、膝関節の中、大腿骨と脛骨の内側と外側の両側にあります。まぁ、言ってみればショックの吸収板、膝の安定を得る板と考えてもらうのがよろしいかと。
損傷を起こす原因は、側副靱帯損傷と、十字靱帯損傷と同様ですが、半月板が単独で損傷する場合もマレにありますが、ほとんどの損傷が前十字靭帯とともに損傷を受けたり、内側側副靱帯とともに損傷を受けます。
関節が慢性的の動揺をきたしている場合、少しの外傷で損傷を受けたりします。

★症状
半月板はひざの両側に位置しているため、切れた場合はそちら側の膝の側面が痛む事になります。
基本的に損傷を受けるのは内側が多く、受傷直後から腫れを認め、血腫、水腫が関節包に溜まります。
半月板を損傷すると、基本的に膝を伸ばす事が困難になり、完全伸展位を取る事が出来ません。損傷の程度が少なければ、膝の曲げ伸ばしの際に違和感を感じたりする程度の場合がありますが、放置するといつまでも痛みが引かない場合や、突然、関節にひっかかり。を覚える事が出たりします。
基本的に靱帯損傷を伴っている事が多く、たいしたことないやろ・・。と安易に考えないようにして欲しいものです。

★対処法
まず、損傷が疑われる場合、専門医の診察をお勧めします。
競技スポーツを続ける以上、関節鏡などの手術を行う方が、競技にも早く復帰する事が出来、予後も良好です。
その後、しっかり筋力を保持するリハビリを行う事になります。

とにかく、膝の損傷は、単独で起こす事が少ないので、注意が必要です。
「この程度なら大丈夫やろ・・。」
安易な考えは慢性疾患に移行しますし、競技能力の低下を招きます。
膝の外傷の際は、まず、専門医の受診。これをお勧めします。





・・本日、もうひとつあります。続きをどうぞ・・・。



カテゴリ:スポーツ障害 | 00:03 |
オスグット・シュラッテル病


スポーツ障害 膝 Part1

最近人気のスポーツといえばサッカーでしょうか。
当院を受診する運動選手も、サッカーで怪我をする割合が多くなりました。少年はもちろん、最近、フットサルという6人制のサッカーが人気で、サッカーをしたことがない成年男女の競技人口が増えているようです。

でまぁ、下肢のスポーツ障害について書いてみようかと思った次第で、膝の障害はサッカーに限った事ではないので、興味がある選手が多いんじゃないかな・・と思っております。

で、膝の障害第1弾として、「オスグット・シュラッテル病」をいってみようと思った次第です。
この障害は結構多くて、運動好きの元気な男の子。でも陥る事が多いようです。

【膝の解剖図】

(字が読みにくいので、クリックして画像を大きくして見てください。)


オスグッド・シュラッテル病は、スポーツによる Over Use (使いすぎ)により、成長期に見られる軟骨の剥離(はくり)骨折(軟骨が引き剥がされかける状態)で、大腿四頭筋の過度の収縮を繰り返すことが原因で発症します。膝蓋腱の脛骨付着部(膝蓋骨下のすねの骨の隆起 脛骨粗面)に慢性的刺激が加わり、変形、膨隆が生じ、結果、膝蓋腱脛骨付着部が剥離損傷する。と考えられています。
安静時には症状が現れることはありませんが、脛骨粗面に圧痛と運動痛が生じます。


症状としては、膝蓋骨(膝のおさらの骨)の下にある脛骨結節(脛骨粗面)に軟骨性の隆起とその周囲の炎症(腫れや痛み)を生じ、正座や屈伸動作が痛みのために困難となる状態であります。
その出っ張り部分に物が触れただけでも痛みを訴える事があり、日常生活でも不便を感じるようになる場合もある訳であります。

でまぁ対策なんですが、接骨院などで、温熱療法や低周波治療のみを行っている所がありますが、はっきり言って効果は期待出来ません。
基本的には、出っ張った軟骨をしっかり圧迫固定することが大切です。放置しておくと出っ張りがひどくなり痛みも増してくる訳なんです。
で、競技を中止して安静に勤めれば痛みは治まってきますが、来院する患者さんのほとんどが競技を続けながら・・を希望する訳で、出っ張った軟骨を固定しながら、競技を行えるようにする。という難問をクリアしなけりゃならないのです。
成長期が過ぎて脛骨結節の成長軟骨が骨化(成長が止まって骨に変化する)すれば起こらなくなりますが、成長期に無理をすると出っ張った状態のまま骨化が起こるので後遺症として変形が残ってしまう症例も多く見られます。

・・以前、息子さんがオスグットで来院した際、お父さんもオスグットで苦労した・・。という親子がおられまして、お父さんの脛骨粗面も随分変形しており、「そんな所、似なくていいのに・・。」というお母さんの苦笑いが印象的でありました(^^;

・・でまぁ、多くの症例は骨の成長が止まる17〜18歳で自然に改善する訳なんですが、たまに、長期にわたって痛みを訴え、分離骨片を認める症例があります。そういう場合、手術的治療(骨片摘出術や周囲の軟部組織と滑液包を摘出する手術)が検討されます。
すぐに治るやろ・・。安直に考えず、痛みを訴えたら専門医の受診をお勧めいたします。



【サポーター】

・・先日来のくそ忙しいで参ったのか、オヤジは寝違えて首が回りません。

おまけに、お隣が引っ越す事がわかり、拡張の準備に入ったもんですから、業者との折衝やら大家さんとの折衝やら、仕事は休めず、首は痛いし、友人が仕事が終わってから相談にやって来るしで・・・。
またしても剣道の練習には行けず、師範のきつ〜いひと言をまた覚悟しなけりゃなりません・・。


・・で、先日の事。
ある患者さんが、膝用のサポーターを購入してくれた訳なんです。

・・このサイズは小さいわ!・・などと賑やかに合わせていたんです。

でまぁ、人の常として、他人が購入していたら自分も欲しくなる。
それを見ていたお婆ちゃん。「私も欲しい!」

・・・まいどあり〜!

てな事になりました。

・・それじゃぁサイズを合わせましょうか・・。

となった時、後から購入するお婆ちゃんが言いました。

「先生、サイズ合わせなくてもAさん(前に購入した患者さん)が買ったサイズを頂戴。あの足が入るんならウチでも入るわ。」

・・なんともきつ〜いひと言・・。

「んまぁ〜〜!失礼な!!」
そう言いながら、院内大爆笑になりました・・。


・・・当院のサポーター(患者さん)は言いたい放題のようでして・・。

サポーターだけに、暖かい人柄が多くて助かります・・。





本日も最後までおつき合い頂き、感謝いたします!!
カテゴリ:スポーツ障害 | 23:25 |
野球肩

スポーツ障害について

基本的に、ブログに小難しい事や専門的事を書いても、読む人は面白くないやろなぁ〜。と極力遠慮していたのですが、どうしても、ブログに時間を割けなくなってきました。
でまぁ、私の専門分野で申し訳ないのですが、時間が少ない時はスポーツ障害の話をUPする事にしました。
出来るだけわかりやすくするつもりなんですが、興味がある方はどうぞ!!


・・・ずいぶん前に、野球肘の事を書いたので、今回は「野球肩」についてです。

野球は、投げる、打つ、捕球する、走る、スライディングなど、それぞれの組み合わせを交互に行う、言ってみれば合理的スポーツであります。
一見、安全で合理的に見える野球なんですが、色々な問題点も多い訳です。
まず、投球による肩・肘に見られる上肢の障害で、特に、少年野球の肘障害は大きな問題であろうと思います。
で、肘の障害に次いで多いのが肩の障害で、ことに骨成長期にみられる肩の障害は注意が必要であります。

基本的に、野球の投球動作は、
.錺ぅ鵐疋▲奪廖 塀猗期)


▲灰奪ング・フェイズ (まきあげ期)


アクセレレーション・フェイズ (加速期)


ぅ侫ロー・スルー (減速期)

の4つに分類されます。
細かくいうとのアクセレレーション・フェイズですが、鬼と挟に分けられるのですが4つの分類の方がわかりやすいと思います。

投球の際の運動中心軸は肩、つまり上腕・肩甲関節であります。この時、重要な働きをする肩腱板(肩甲骨から上腕骨頭と結ぶ回旋筋群)は、外旋動作(棘上筋、棘下筋、小円筋が上腕骨の大結節につき、この働きをする)、内旋動作(肩甲下筋が上腕骨の小結節部につき、この働きを行う)を円滑に行っているのです。
ところが、能力以上に無理をして投球しすぎたり、さらに年齢的な要因が入りますと投球障害が生ずる訳であります。

・・でまぁ、コッキング・フェイズでは、三角筋炎・棘上筋炎や上腕二頭筋長頭腱炎や腱板損傷が発生しやすくなり、アクセレレーション・フェイズでは三角筋炎や腱板損傷また小学生などでは上腕骨近位骨端線離開(リトルリーグ肩)などを」発生させます。
フォロー・スルーでは、上腕三頭筋腱炎や関節包や関節唇などを損傷し易くなります。

・・・実際問題として、痛めた後どうする?というのを一番知りたい事だと思います。
まず1番は、オーバーユースですから、肩を休める。これにつきます。
試合が近いから・・とか、レギュラーをハズされるから・・とか。休めない。休みたくない。という選手が圧倒的に多いのも事実です。
思い切って肩を休め、正しい投球フォームを身に付け、リハビリをしてやる事によって、競技能力は上がる。と思って欲しいのです。

で、リハビリの方法や、投げ方の練習の仕方も色々あるのですが、投げ方の指導は難しいですし、投げ方を書いても解らないと思うのです。ですんで、分かり易い方法をひとつお教えします。

・・・それは真下投げ。であります。
右投手なら、右足を後ろ、左足を前。ボールを左足の前の地面に叩きつけるのであります。硬球は弾まないので、軟球が良いと思います。
ボールが真上に弾むように、真下に投げさせる。この動きは子供のメンコなどの要領であります。
この投げ方がスムーズに行われると、左足への体重移動と骨盤体幹の回旋が自然に起こり、上肢を上から下へと回旋せずに投げる事が出来るのです。
初診の時の、痛みが強い時でも、痛みが伴わない投げ方が存在するという動かぬ証拠でもあり、痛みが伴う投げ方よりもこの痛みが伴わない投げ方を練習しよう。と説得する事も出来るのです。

・・・野球肩で練習もままならないという選手。一度試してみてください。
要領が解らなければ、ご質問頂ければお答えいたしますんで(^^)




敬老の日

・・地方から来ている大学生の患者さんが言いました。

「敬老の日。お婆ちゃんに電話したんすよ。俺や!って言ったら、オレオレ詐欺と間違われて、電話切られちゃいました!」

「ホンマに!しっかりしたお婆ちゃんやんか〜。」
と、大笑いしました。

・・当院に通院中のお婆ちゃんが言いました。

「敬老の日。孫から小遣いをせびる電話がかかってきたんで、オレオレ詐欺やろ!と言って、電話を切ってやりましたわ。ホンマに敬老の日にまでせびらなくてもええのに・・。ホンマ腹がたつ!!」

「いやホンマ・・でも、しっかりしてますねぇ〜。」
と、しんみり顔で言いました・・。

・・・敬老の日は、しっかりもののご老人を育てる日。のようです・・。



本日も最後までおつき合い頂き感謝いたします!
カテゴリ:スポーツ障害 | 01:15 |
肉離れ


陸上選手が訴える症状の多くが筋肉の障害であります。
いわゆる肉離れ。というやつもそれに含まれますが、肉離れの状態を誤って解釈している患者さんも多いようです。
「肉離れって骨から筋肉が外れる事ですよね!」なんて言われたりするんですがそれは誤りです。細かい筋繊維がブチブチと切れた状態と思って貰った方がよく、程度によると結構日にちがかかる場合があります。

筋肉の種類には3種類あります。いわゆる強い力を発揮する速筋繊維。これはミトコンドリアをあまり含まず、白く見えるため白筋繊維とも呼ばれています。収縮スピードが速く、FG繊維とも言われています。
そして発揮できる力は弱いけれど、長く持続できる筋繊維が遅筋繊維です。この筋肉はミトコンドリアを多く含むため、赤筋繊維とも呼ばれます。収縮スピードは遅く、SO繊維とも呼ばれます。
最後に、FG繊維とSO繊維の中間の働きをするのがFOG(FO)繊維と呼ばれ、ピンク色に見える筋繊維です。中間筋とも呼ばれ、分類は遅筋繊維に属します。
筋繊維それぞれの働きですが、陸上競技でしたら短距離走など無酸素運動でその威力を発揮するのがFG繊維です。強い力を発揮できますが、すぐに疲れてしまうという性質があります。よく競技中に足が攣ったとかいいますがこれはFG繊維に乳酸がたまった状態であります。
反対に、マラソンなど長距離走でその真価を発揮するのがSO繊維です。有酸素運動を行い長い時間その活動を続ける事ができます。
基本的に日本人はFG繊維が筋肉に占める割合が、欧米の人間に比べて低いと言われています。言葉を換えるとSO繊維の含有率が、高いという事になります。日本人の女子マラソンが、世界的に高レベルにあるのもうなずける事実であろうと思います。

当院に、中学生の陸上選手が治療に来ています。彼はリレーの選手にも選ばれ、100m、200m、400m、1500mにも出場するというマルチ選手です。大阪の強化選手にも選ばれた彼ですが、しょっちゅう肉離れを起こして来院します。右足を痛めていたと思ったら、一週間後には反対の足を。太腿かと思えば今度はふくらはぎ・・。
来院するたびに「なぁ・・。そろそろ種目を絞ったら。」と助言します。やはり種目によっては、SO繊維がメインになったり、FG繊維がメインになったりします。筋肉が悲鳴をあげているのは事実です。
400mで3位になった後、来院した彼に聞きました。
「なぁどの種目が好きやねん。どれが得意なんや。」
彼は言いました。
「この前まで400やってんけど、負けたから200です。」涼しい顔で言います。

・・どうやら当分彼のマルチ出場は続きそうです。当分肉離れからは逃れなれないなぁ・・。オヤジは筋肉を伸ばしながら思いました。
カテゴリ:スポーツ障害 | 15:39 |
スパイク


野球少年の障害で、見落とされがちなものに足部の障害があります。
足は普段から靴下を履き、靴を履いていますから、そんなに人目にもつきません。少々指が曲がっていたり、巻爪になったりしていても痛くならない限り改めて観察する事はないと思います。
「専属トレーナー」の所で、息子になかなかスパイクを履かせなかった話を書きましたが、実はその続きがあります。今、息子が履いているスパイクの中敷きは、私のオーダーメイドです。少し大きめサイズのスパイクを購入させて、中敷きとかで足に合わせるように細工が施してあります。ゴム製のグリップでも、点で足に衝撃が加わりますから、注意が必要です。

今日、息子と同じチームの同級生が診療に来ました。ほぼ同時期にチームに合流した、まぁ同学年で一番の古株組です。
ちょうど足の甲の部分に痛みを訴えていたのですが、患側の足指(第4)が上に上がらない状態に陥っていました。話を聞いてみますと、一年生の時に購入したスパイクを、三年生になっても履いていたそうです。子供が「足が痛い!」と訴えるようになったため、大きいサイズのスパイクを購入した所だそうです。
恐らく、サイズの小さくなったスパイクを履いて、紐を通す部分の金具もしくは縫い目の部分が、足の甲の腱を圧迫していたのでは・・と思います。そのため、その部分が炎症を起こし、痛みを訴えたのだと思います。腱を圧迫していたため、指を上に上げる事が出来なくなったんでしょうが、このまま放置していたら、指は足底に曲がったままになったでしょう。
「すぐに足が大きくなるんだから、もう少し我慢して履いときなさい!」心当たりがあるお母さんはおられると思いますが、足の障害は一生付いて回りますから注意が必要です。

仕事から帰って、改めて息子のスパイクを観察してみました。嫁に「踵を踏むな!」としょっちゅう注意をされている息子のスパイクは、前も後ろも随分とくたびれてきていました。オヤジの思いやりを知ってか知らずか・・。息子は自由奔放に走り回っているようです。

カテゴリ:スポーツ障害 | 00:05 |
専属トレーナー!

少年野球の障害、野球肘について書いてみたんで、今回は自分の息子に行っている、障害の予防法でも書いてみます。ご参考になればいいんですが・・

息子は今年で小学3年生。年子の姉とは20cmも身長の低い、いわゆるチビであります。チビであるという事は、指も短いというのは自然の成り行きで、必然的に握力も弱いという方程式が成り立ってしまいました。
小学校1年生から野球を始めた息子に、最初に教えたのがボールの握り方でありました。練習に行く度にコーチから握り方を注意されたようです。が、これだけはしつこくやらせました。
親指、人差し指、中指、薬指でボールを握れ!!であります。急に身長が伸びる訳でもないのでこれは現在も進行中でありますが、これだと尺側手根屈筋の収縮を抑える事が出来ます。そして握力の弱さも補う事が出来るんですが、コントロールが一定し難いという難点は否めません。
もっとも3本でも4本でも、最初は相手にボールは届きませんでしたが・・

投球フォームは、肘を曲げて耳の後ろにボールを構えて投げろ!!です。
これはコッキングからアクセレレーションにかけて前腕が回内せず、外反が強制されない投げ方です。野球肘で悩んでいる子供をお持ちのお母さん。一度お試し下さい。
ちなみに、立て膝からの投球というのをさせると、フォロースルーが一定の場所に行くようになります。肩や肘への負担が少なくなりますから、障害の予防に役立ちます。これもお勧めです。

入部したての頃、スパイクを履きたがる息子に、最初は運動靴で練習に行かせました。野球にはスパイク。買い与えてやるのは簡単でしょうが、履かせない理由を納得させるのに苦労しました。足型を取り、まだ足の発達が不十分な時でしたから、スパイクを履かせるにはまだ早い!!・・・と嫁にも子供にも結構嫌なオヤジでありました。

才能があるのかないのか・・・。それでも腐らず野球の練習に通うチビな息子ですが、もういい!!と言われるまで専属トレーナーをしてやろうかな・・。と思っています。
カテゴリ:スポーツ障害 | 16:16 |
野球肘

新学期も一ヶ月が過ぎ、新しい学年もそろそろ板についてきた頃なのでしょう。運動選手も新チームでの活動が活発になってきたようです。

当院を訪れる少年野球選手の障害で、もっとも多いのがやはり野球肘でしょう。野球を続ける以上、切っても切れない障害の一つであります。色々な要因が絡み合って発症しますが、まずは簡単に野球肘の発生機転を述べてみます。
基本的に野球のボールは親指、人差し指、中指の3本で支えます。薬指、小指は曲げて添える形でボールを握りますが、この2本の指を曲げる事によって、尺側手根屈筋が収縮します。この筋肉がくっついている場所が肘の内側になります。
ボールを投げる時、肘を曲げてテークバック(コッキング期)
そして肘を伸ばしながらボールを強く前に押し出して行き(アクセレレーション期)そしてボールを放して以降をフォロースルー。この肘を曲げて伸ばす動作が尺側手根屈筋を収縮、肘の外反と相俟って肘の内側に炎症を起こさせます。

ゴールデンウィーク前後、立て続けに野球肘の小学生が来院しました。
わたしの診察のひとつに、ボールを実際に投げさせるがあります。野手の二人は明らかに投球フォームに問題がありました。投手一人はフォーム以前の問題で明らかな投げすぎでありました。母親の話によると「中一日で140球を試合で投げた・・・」小学生にはあまりに無茶な投球です。
投球フォームの問題は治療の一環として指導、矯正が可能ですが、投球過多に関しては本人とか家族とかが、チームにはっきりもの申す事が重要だと思います。
幸運にも全員、関節の可動制限も認められず、今のところ選手生命を脅かすものではありません。しかし、これからも野球を続けて行こうと思うのなら、チームに迷惑がかかるから・・とか、コーチに言われたから・・とか考えずに練習を休んで欲しいと思います。すっぱり休む!これがやっぱり早く治る秘訣かもです。

心当たりがある選手並びにご両親。ご一考願います。
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